聖書の信仰は、現代の歴史状況の中でいかなる展望を示しうるか。パレスチナ問題や天皇制問題を通してキリスト者のあり方を問う。
私たちはもはや正統的キリスト教教義を絶対化したり、そこに安住したりしていることは出来ないのであって、その中身が厳しく問われなければならない。……原理主義と熱狂主義に対し、単に寛容を主張するだけでなく、聖書の読み方として、どこが問題なのかがもっと語られねばならないのではないか。(「あとがき」より)
あの時代のキリスト者たちは、どのような葛藤を抱えていたのか
戦時下を生きたキリスト者たちを、「戦争協力者」や「抵抗者」といった一面的な評価で裁断できるのか。
富坂キリスト教センターが立ち上げた「内面史研究会」は、キリスト者個々人の内面の歩みに注目し、当事者のこころの葛藤、相克や矛盾などを検証することにより、十把一絡げの評価や決めつけを乗り越え、太平洋戦争下のキリスト者たちの動向、すなわち追随・加担・協力、そして沈黙・拒否・抵抗の諸相を重層的に跡づけようとする。
本書では、日本人キリスト者のみならず植民地下の現地のキリスト者にも着目する。キリスト教思想史・教会史への新たな視角。
【目次より】
共同研究のねらい 戒能信生
Ⅰ
「日本的基督教」への道のり――今泉源吉のあゆみ 大久保正禎
罪責感について――ホーリネス史から考える戦争責任 上中栄
戦時下説教の実像――大連西広場教会月報『霊光』を中心にして 戒能信生
戦時下を生きた牧師 廣野捨二郎 矢吹大吾
Ⅱ
日本統治末期の朝鮮における信仰弾圧とクリスチャンの内面分析――朴允相と孫良源のケース 徐正敏
植民地朝鮮における「信教の自由」――「改正私立学校規則」と「神社参拝問題」を巡って 李省展
戦時期台湾におけるキリスト教徒の「内面」を問う 高井ヘラー由紀
宣教師の見た日本人牧師――「満洲国」のキリスト教界を例として 渡辺祐子
Ⅲ
H・E・テートの内面史研究 山崎和明
共同討議
わたしたちは、どのようにしたら人を赦すことができるのだろうか。ルワンダ大虐殺で父親と親族を亡くしながらも、アフリカにおいて平和と和解の働きに取り組む牧師ムセクラと、和解の神学を説くジョーンズが、対話をしながら赦すことの重要性を考える。
戦後の新たな人生を歩みだそうとするときフランクルは何を感じ、考えていたのか。
いま明かされる名著誕生の背景。
強制収容所からの解放と帰郷という、フランクルの人生においても最も重要な時期の伝記的な事実と、当時の中心思想の一端を、未公開書簡と文書を用いて再構成する。
名著誕生の背後にあった個人史と時代史の二つの文脈が、初めて明確に交差する。
編者は、膨大なフランクル文献に最も詳しい、ウィーンのヴィクトール・フランクル研究所所長アレクサンダー・バティアーニ博士。
本書は、「東アジアにおける平和と和解のためのキリスト教の貢献」とのテーマをもとに福岡女学院大学で2018年1月27日に行われたフォーラムにおいて、まさに東アジアの気鋭の研究者たちによってなされた諸発題を編集したものです。(「あとがき」より)
キリスト教神学者でありながら、反ナチ抵抗運動の一員としてヒトラー暗殺計画に加わり、ドイツ敗戦直前に強制収容所で処刑されたディートリヒ・ボンヘッファー(1906―45)。生命を賭して時代への抵抗を貫き、若くして殉教への道を選んだのは、なぜか。新たな知見も交えながら、その生涯と思想の意味を現代に問う。
「戦争体験者よ、真実を語れ」と呼びかけ、独力で戦争資料館を改設して40年。遺品が遺品を呼び、遺品が訴える。「戦争に『ノー』と言えるよう、人々の考え方を変えることが可能だ」と。
言葉を失う出来事は、なぜ繰り返し起こるのだろう。動機なき大量殺人、他なるもののいわれなき差別と排除……今日まで築いてきた(と思われる)理想とモラルは、その根から崩れ去ってしまうのか。
教育者としてキリスト者として、障がい者・社会的弱者と共に生き、その実践からユニークな工夫と指針を生み出してきた著者が、今あらためて強く訴える。他者を生かそうとすること、ここに人間性は根ざしているのではないのか。
あらゆる傷を負った人びとを包もうとしたホームレスの母、藤原繁子牧師、この人を見よ。
靖国訴訟、指紋押なつ拒否訴訟、韓国朝鮮人BC級戦犯者の国家補償請求訴訟など宗教・民族にかかわる裁判に弁護士として関わってきた著者がその経験を踏まえ、多数決で奪うことのできない「少数者の人権」を確立し、民主主義を確かなものとするために綴る書。
独立を宣言するとはいかなる営みか。その本義は果たされたのか――
1919年2月8日、東京・在日本東京朝鮮基督教青年会館(現・在日本韓国YMCA)を舞台として、朝鮮人留学生たちによって世に叩きつけられた「2・8朝鮮独立宣言」。それから100年を迎えることを記念し、2019年には東京と大阪でシンポジウムが開催された。その記録、ならびに事前におこなわれた連続講座の内容を合わせて書籍化。宣言を主導した留学生たちの活躍やネットワーク、当時の植民地統治のありよう、ジェンダーへの視点などを多角的に考究し、現在も尽きせぬ宣言の力を浮かび上がらせる。
幾度も戦乱の地となり、貧困、内乱、難民、人口・環境問題、宗教対立等に悩むアフガニスタンとパキスタンで、ハンセン病治療に全力を尽くす中村医師。氏と支援団体による現地に根ざした実践から、真の国際協力のあり方が見えてくる。
公民権運動を率いて世界中の人びとをはげましたキング牧師。キング牧師の骨太の人生を見つけましょう。みなさんはこんなことを知っていましたか?キング牧師は不公平な法律とたたかうために、平和な抗議活動を指導しました。キング牧師はあの有名な「わたしには夢がある」の演説をおこないました。
「憲法学者としての良心と理性、キリスト者・市民としての責任」に生きた人
深瀬忠一(ふかせ・ただかず、1927-2015)は、陸軍幼年学校、陸軍士官学校をへて東大に進んだ。敗戦による旧来の価値の崩壊を通してキリスト教信仰と出会い、憲法学を志すようになった。北海道大学法学部で長く憲法学を講じ、画期的な平和的生存権の理論を構築するとともに、恵庭訴訟・長沼訴訟などの憲法裁判に研究者として深く関与、また北海道キリスト者平和の会を支えるなど、理論と実践の両面で平和憲法の定着のために生涯を捧げた。
本書は、深瀬没後4年有余を経て、その衣鉢を継ぐ者たちが、憲法学、憲法訴訟、平和運動、信仰生活など多方面から彼の歩みを振り返り、平和憲法が危機にある今日、人々が平和に生きる権利を守るための新たな取り組みに向けて、力強いメッセージを紡ぎだそうとする論集である。
戦争の記憶が薄れていくなかで、日本という国と日本のキリスト教会の歩みをしっかりと見つめ、「負の遺産」と言われるものにも真摯に向き合っていこうと、四半世紀にわたって学びを続けてきた。本書はその中で語られた「天皇制」と「平和憲法」の講演を集めたものである。
日中戦争に関して、従来取り上げられてこなかった日本の大陸に対する宗教政策と、占領地に残された中国人宗教者たちの活動を活写し、当地のキリスト教世界を重層的、複眼的にとらえなおすことによって、日中戦争を描き出す。
なぜ、強国なのか!?なぜ、情報大国の地位を占め続けられるのか?日本の行く末を案じて中東と世界情勢を分析する際には、イスラエルとユダヤ人への正しい理解が不可欠となる。それだけ世界の政治・経済エリートへの影響力が大きいからだ。にもかかわらず、その実態はあまりに知られていない。世界の鍵となる国の内在論理とユダヤ人の心性を第一人者が解き明かす!1 私とイスラエルについての省察ノート(なぜ私はイスラエルが好きなのか;旧約聖書の再発見とヨムキプール戦争の教訓 ほか)2 ロシアとイスラエルの考察ノート(モスクワのオランダ大使館領事部;ナティーブの対ソ秘密工作 ほか)3 日本とイスラエルの考察ノート(『スギハラ・ダラー』から杉原千畝を読み解く;東日本大震災をどう考えるか ほか)4 イラン、シリア、北朝鮮の考察ノート(中立国と情報工作;イラン危機と日本 ほか)5 キリスト教神学生への手紙(ある神学生への手紙―『トーラーの名において』の評価;あるキリスト教神学生からのメール―ユダヤ民族の否定について ほか)
ヨーロッパのユダヤ人同化を絶望視し、新天地にユダヤ民族の新しい法治国家建設を目指した、近代シオニズム宣言の書。1896年出版と同時に賛否大論争を巻き起こした、シオニズム運動の先駆的精神・原点を示す。
ユダヤ人国家ボヘミアにおけるユダヤ人狩り「消え去った」時フランスの状況ガリチアの劫火法律の敵ジャーナリストの学校操縦可能な飛行船
イスラエル内パレスチナ人とは、イスラエル建国時の民族浄化を免れ、イスラエル国内にとどまったアラブ人を指す。ユダヤ人国家の理念を根底から揺さぶる存在であり、それゆえ苛烈な隔離・差別政策の標的とされてきた彼らの現在を追い、その連帯と闘争に光を当てる。第1章 「ユダヤ的かつ民主主義的」?第2章 土地体制第3章 ユダヤ化と人口脅威第4章 系統的差別第5章 民主的変革潰し第6章 新しく想像力を働かすための見直し
1948年のイスラエル建国に至る政治過程において決定的な役割を果たしたアメリカは、民主主義・民族自決の理念に反するユダヤ人国家建設をなぜ支持しえたのか。系譜学的アプローチによりパレスチナ問題の根源に迫る。アメリカ人であり、ユダヤ人であり、シオニストであることの孕む矛盾のなかでイスラエル建国を実現したアメリカ・シオニスト運動の全容。序章 ユダヤ人問題、パレスチナ問題、国民国家(問題の所在;本書のアプローチ)第1部 アメリカ・シオニスト運動の成立―ルイス・ブランダイスを中心として(アメリカ・シオニスト運動の開始;ブランダイスと「アメリカ」・シオニスト運動の形成;アメリカ・シオニスト運動とパレスチナ・ユダヤ・ナショナル・ホーム)第2部 アメリカ・シオニスト運動と「パレスチナ」(アメリカ・シオニスト運動とパレスチナ・アラブ人;アラブの大蜂起・パレスチナ分割案・パレスチナ・アラブ人の「移住」)第3部 アメリカにおける「パレスチナにおけるユダヤ・コモンウェルス建設」というアジェンダ形成・確定をめぐる権力過程(アメリカ・シオニスト運動における「ユダヤ人国家建設」「ユダヤ軍創設」というアジェンダをめぐる権力過程;ビルトモア会議;一九四三年アメリカ・ユダヤ人会議―アメリカ・シオニストの「団結」からアメリカ・ユダヤ人の「団結」へ)イスラエルの建国とパレスチナ問題の発生
本書は、グローバル化の進展する現代社会を「地球社会」としてとらえ、そのような社会の「進化」のための重要なキーワードが「共生」であると考えた。そして、共生のめざすところは言葉の根源的な意味におけるシャローム(平和)であることを理論的・実証的・実践的に論究する。その論究は、神学、政治学、社会学、人類学など多岐にわたり、学際的な討議をとおして、ここに結実した。
第1部 シャロームの理論(シャロームについて;ポスト・グローバル時代の空間秩序像;インターネットによる口語化と平和)第2部 シャロームの実証(宗教多元主義の方向と平和の探求;タイにおける仏教団体への信頼とその変化;メディア教育と共生)第3部 シャロームの実践(人間の安全保障の視座からの地球共生;現実の中で「生きる」ための実践;教育と共生)
「私の八月十五日」シリーズ/戦後七十五年・平和祈念号。高倉健が心を通わせた人たちの、終戦の日の記憶。青木矩雄(一〇一歳) マニラ湾で見た夕日宮〓孚爾(九十六歳) 名前に守られ、生かされた西野忠士(九十四歳) 敗戦実感の時岡田とくゑ(九十二歳/書き手:岡田一夫) 嘘だった!青木米子(九十一歳) 幻の神風川崎勝子(八十九歳) 死と鮮血と臭気と藤田義直(八十八歳) 日本刀をおくらにゃいかん野田ユミ子(八十七歳) 謝るでもなく山崎佐知子(八十七歳) なんで拾うのよ…下世吉美(八十六歳) 山小屋での終戦、桜島の噴火〔ほか〕
神学の現在は? 宣教の未来は?
故ロバート・リー博士によって1989年に設立され、日本における福音宣教が持つ今日的課題に真摯に取り組んできた東京ミッション研究所(Tokyo Mission Research Institute=TMRI)。その設立30周年を記念した、弟子たちによる気鋭の論文集。
平和な日常と人類の未来を保障するために、現代を生きる私たちにとって最大かつ喫緊の課題である「核廃絶」。その実現に向けて、宗教はどんな役割を果たしうるのか。様々な宗教を背景に平和・非核を追求する活動に取り組む宗教者・研究者らが語り合ったシンポジウムの記録。教皇フランシスコの二〇一九年来日時のメッセージも収録。