商品詳細
タグ
説明
東方正教会と西方教会の断絶の原因となった「フィリオクェ」問題に対する神学者たちの教会一致回復のための提言。
世界教会協議会(WCC)の信仰職制委員会が企画したフィリオクェ問題に関する協議の成果であり、東方教会(正教会)および、西方教会(改革派教会・聖公会・ローマカトリック教会・復古カトリック教会)の神学者によるエキュメニカルな省察である。
ニカイア・コンスタンティノポリス信条は、キリスト教の普遍的・使徒的な信仰の根本的真理の厳かな証言であり、16世紀にわたって、何百万というキリスト者によって唱えられてきた。にもかかわらず、その一つの項目の言葉遣いに対して疑義がはさまれたことによって、この信条は、今日に至るま続いている東方正教会と西方教会との断絶の原因となり、いまなお断絶の象徴となっている。ここで問題となっているのは、神学の中心的な問題であり、極めて錯綜している。すなわち、それは聖霊の、父からの永遠の発出において子の果たす役割についての問いなのである。
東方正教会が用いてきたニカイア・コンスタンティノポリス信条には含まれていない聖霊の発出についての叙述が、西方教会が用いてきたものに含まれたことによって論争が引き起こされた。このいわゆるフィリオクェ(子よりもまた)定式について、世界教会協議会(WCC)の信仰職制委員会は、1978年と1979年に、東方正教会と西方教会双方の神学者たちからなる協議会を開催した。この協議会とそれに続く討論の報告書と、協議会に提出された諸論文とが、本書の骨子をなしている。
この点で合意することなしに、東方正教会と西方教会との一致の回復は考えられない。この合意のために苦闘する中で、このフィリオクェ問題を、共通の神学的・霊的・典礼的視点を発展させるための鍵問題とするような文脈の中におくのは、神についての完全な三位一体的理解なのである。本書に収められた諸報告の中で示された諸研究が、今後、諸教会がその召しにともに応えるに当たって、より大きな目に見える一致のために大きく寄与することを心から願うものである。
【目次】
日本語版のためのまえがき ルーカス・フィッシャー
まえがき ルーカス・フィッシャー
第Ⅰ部 メモランダム
1 エキュメニカルな見地からみたフィリオクェ条項
緒言
1.序説
2.ニカイア信条とフィリオクェ条項
3.三位一体論と聖霊の発出
4.フィリオクェの神学的局面
5.問題の今日性
6.提言
第Ⅱ部 論文
A 歴史的省察
2 後期ビザンティン教父による「聖神○の発出」 マルコス・A・オルファノス
1.フォティウス
2.キプロスのグレゴリイ
3.グレゴリイ・パラマス
4.エフェスのマルコ
5.結論
3 フィリオクェ論争の歴史的発展とその意味 ディートリッヒ・リッチュル
1.論争史の外的な経過についての簡単な説明
2.論争の背後にある神学的な諸問題
3.最近の論争が示唆するもの
B 諸教会の伝統におけるフィリオクェ理解の発展
4 聖霊の発出と信条へのフィリオクェの追加に関するエキュメニカルな同意を目指して アンドレ・ドゥ・アルー
1.公式の論議
2.新フォティウス命題
3.問題は動機
4.無意味な弁明
5.積極的意義
6.一致の教令
7.源泉としての教父
8.二つの相互補完的伝承
9.コンスタンティノープル信条
10.信条への追加
結論
5 フィリオクェ条項:聖公会の一つの姿勢 ドナルド・M・オールチン
1.1976年のモスクワ声明
2.17世紀の討論
3.19世紀における進展
4.現代の考察
6 フィリオクェと復古カトリック教会──神学的考察と教会宣言の主要段階 クルト・シュタルダー
1.1874~75年のボン再合同会議
2.1875年から1942年までの期間
3.ウルス・キュリ司教の業績
4.キュリ司教が到達した、神学的立場に基づく教会声明
5.復古カトリック教会と東方正教会間の「信仰対話」の始まり
7 最近の改革派神学におけるフィリオクェ アレスデア・ヘロン
1.フィリオクェに賛同する立場
2.批判・拒否する立場
C 聖霊の発出論における新たな論議の始まり
8 聖霊の発出問題およびその教会生活との関連 ヘルヴィング・アルデンホヴェン
序
1.フィリオクェ問題
2.キリスト教生活における三つの例
3.結論
9 フィリオクェ──その昨日と今日 ボリス・ボブリンスキイ
1.歴史的論争の論点の重要性と今日的意義
2.フィリオクェ付加の歴史的環境と事実
3.フィリオクェの積極的な神学的内容
4.「フィリオクェ主義」の欠陥
5.正教的三位一体観へのフィリオクェの超越、ないし統合
10 フィリオクェ問題──今日に至る状況に関するローマ・カトリックの見解 ジャン・ミゲル・ガリグ
11 フィリオクェ論争を解決するための神学的提言 ユルゲン・モルトマン
1.ニカイア信条の原文
2.ニカイア信条の原文は何を未解決のままにしているのか
3.神はご自身に真実であられる
4.父からの霊の発出
5.子の父からの霊の発出
6.聖霊は子から何を受領するのか
7.三位一体論における上位概念の問題
12 「神化」、「神の子とされること」の根拠としての聖霊のみ父からの発出と、み子との関係 ドゥミトル・スタニロアエ
1.一致への一歩としてのガリグ神父の見解
2.三位一体の関係、および聖霊によりこの世にもたらされる創造されたものではないエネルゲイアについての正教会の教理
3.み子における聖霊の活き活きした安らぎ
4.ビザンティン神学で定義づけられている聖霊とみ子との特別の関係の諸相
5.モルトマンの理論、および一つの位格と「他の」位格との関係によるその完成の可能性
原注および訳注
用語対照(和→英)
用語対照(ギリシャ語およびラテン語のカタカナ表記語→和)
用語対照(ギリシャ語およびラテン語のローマ字表記語→和)
用語対照(英→和)
フィリオクェ問題およびその関連問題に関する年表
あとがき