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西洋中世世界のジェンダー構造について、とりわけキリスト教における性の観念に注目し、男装と女装、レイプ・売春、マスキュリニティ(男性性)といった観点から、一般読者にもわかりやすい語り口で詳述する。現代のジェンダー問題への示唆にも富む一冊。
【目次】
はじめに
第一章 衣服のジェンダー論
1 衣服とは何か――衣服の文化論
(1)何のために衣服を着るか
(2)ジェンダーを決定する衣服
(3)ジェンダーとセックス
2 衣服の権力論
(1)権力とジェンダー
(2)衣服条例とは何か
(3)ジェンダー構造を維持するための衣服条例
(4)衣服規制とファッション
3 前近代の服装論
(1)旧約聖書の服装論
(2)新約聖書の服装論
(3)教父たちのおしゃれ批判
(4)トマス・アクィナスの衣服論
(5)ルネサンスの衣装論
第二章 異性装論
1 異性装という問題
(1)「異性装」という言葉の登場
(2)禁じられている異性装
2 聖女たちによる男装
(1)女性の聖人たち
(2)『黄金伝説』に登場する男装の聖女たち
(3)ヤコブスは男装聖女たちをどのように見ていたか
(4)シェーナウのヒルデグントの場合
(5)女たちはなぜ男装をしたのか
(6)男になる
3 騎士となった女性――『シランス』の場合
(1)『シランス』という物語
(2)名は体を表す
(3)行動がジェンダーを決定する
(4)マーリン
(5)封建制
(6)〈生まれ〉と〈育ち〉
4 手段としての女装
(1)女に近づく手段としての女装
(2)売春の手段としての女装
(3)演劇空間における女装
(4)『女性への奉仕』を読む
(5)ウルリヒはなぜ女装をしたのか
(6)ウルリヒの女装は男装者とどのように違っていたのか
(7)マスキュリニティと女装
第三章 セクシュアリティとジェンダー
1 西洋中世におけるレイプの構造
(1)レイプは歴史を持っているか
(2)古代ローマの法に見るレイプ
(3)ゲルマン部族法におけるレイプ
(4)聖書解釈学者たちのまなざし――旧約聖書に見られるレイプとその解釈の歴史
(5)教会法におけるレイプ
(6)女に対する性犯罪としてのレイプの成立
2 レイプ犯罪の現実を見る
(1)襲われたジョーン
(2)グランヴィルとブラクトン
(3)実際に起訴されたレイプ犯罪の数
(4)女を恐れる男たち
3 中世末期の娼婦たち
(1)教会人の売春観
(2)中世都市と売春
(3)中世末期のロンドンと売春
(4)サザクを概観する
(5)サザク娼館条令を読む
(6)生活者としての娼婦
第四章 西洋中世における教会とジェンダー
1 教会法による結婚
(1)教父たちの結婚論
(2)教会法に見る結婚
(3)アレクサンデル三世による結婚論の完成
(4)教会法による結婚の問題性
2 カトリックと女性聖職者
(1)カトリック教会における聖職からの女の排除
(2)宣言
(3)書簡
(4)教父たち
(5)教会法
(6)スコラ哲学者たち
(7)開かれた議論のために
(8)神学的議論から歴史的議論へ
(9)叙階に関しての問題
(10)女助祭
(11)当時の人々にとって女助祭は助祭であった
3 教皇になった女性
(1)女教皇の登場
(2)女教皇の存在が受容される
(3)女教皇をめぐる論争とその存在の否定
(4)女教皇のファンタジー
第五章 中世のマスキュリニティ
1 グレゴリウス改革とマスキュリニティ
(1)グレゴリウス改革
(2)グレゴリウス改革とはなんであったか
(3)聖職者はなぜ結婚してはいけないのか
(4)教会との結婚
2 中世におけるハゲとマスキュリニティ
(1)カール禿頭王は禿げていたか
(2)長髪の王たち
(3)短髪の王たち
(4)なぜカールはハゲ王と呼ばれたか
(5)トンスラ
(6)頭髪をめぐる戦い――男らしさをめぐって
おわりに
あとがき