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純なナポレオンの末裔が珍事を巻き起こす
春のある日、銀行員隆盛の妹、巴絵に一通の手紙がシンガポールから届く。
姿を現したのは、フランス人、ガストン・ボナパルト。
ナポレオンの末裔と称する見事に馬面の青年は、臆病で無類のお人好し。
一見ただのうすら“おバカ"だが、犬と子どもに寄せる関心は只事ではない。
変質者か?
だが、すれっからしの売春婦をたちまち懐柔したり、ピストルの弾丸を相手の知らぬ間に抜き取るなど、はかりしれない能力も垣間見える。
そして行く先々でその生真面目さから珍事を巻き起こしていく。
日本に来た目的は?
その正体は?
そんな“おバカ"な一方で、彼は出会った人々の心を不思議な温かさで満たしていく。
遠藤周作、得意の明朗軽快なタッチながら、内に「キリスト受難」の現代的再現を意図した心優しき野心作。