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2012年、山中伸弥教授は、ips細胞の樹立によりノーベル生理学・医学賞を受賞した。
ヒト受精胚を破壊せずにES細胞と同じ性質を持つips細胞研究の道を開いたことは、生命倫理学にも多大な貢献を果たしたが、このことは意外に日本では知られていない。
本書は、ヒポクラテスの医の倫理に起源を持ち、ヴァチカンが主導してきた人格主義生命倫理学の立場から、欧米および日本など先進諸国における終末期 医療と生物医学研究をめぐる議論を取り上げ、それを規制する法律、そしてその背景となる倫理思想を概観する。
欧州大陸諸国が優生学への反省から人格の尊厳 を最高原理とするのに対し、個人主義・実利主義の優勢な英米圏や日本では研究の自由を優先し、不妊治療で発生した余剰胚の実験利用が現実に行なわれている事実を指摘、安楽死判決も含めて、これらの国の法規制に人間の命を選別する優生思想が存在することを深い危惧をもって論じる。
経済成長戦略の一つとして再生医療の実用化を掲げるわが国において、精神と身体の合一として人間を捉える人格主義生命倫理学を提示する問題作。