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社会も教会も男女二元論・異性愛主義で性を考えてきました。しかし、その男女二元論・異性愛主義には当てはまらないLGBTQ(性的マイノリティ)の方々がおられることは、最近ではもう十分明らかになったと思っています。ですから、性の多様性という言葉も定着し、性的マイノリティの方々への差別はハラスメントとなり、さらに同性婚を認める国も多く出現してきました。この現実から目を背けることはできません。
しかし、教会はそれらの方々をまるで存在しないかのように・・考えないようにしてきました。神によって創造され、イエスさまが愛しておられる一人ひとりであるにもかかわらず、男女二元論・異性愛主義に当てはまらない人々を、教会はいまだに受け止めようとしていないところがほとんどです。そういう人が教会には来ない、あるいはいないと錯覚しているようにも思います。
どうして教会は、この問題を敬遠したり否定的に考えるのでしょうか。
それは、否定していると思えるわずかな聖書箇所と、創世記の神は人を男と女に造られたという男女二元論・異性愛主義でしか性を考えない、その発想から抜け出ることができない、抜け出たら神の御心から逸脱してしまうと思う方もおられるでしょう。
しかし、聖書は男女二元論・異性愛主義の枠に当てはまらない人々を排除しているのでしょうか?――これが本書の問いです。
聖書は当時の読者に何を語って来たのか/何を語っていないのか/福音に照らして何を語り得るのか。
章ごとに、聖書箇所を掘り下げて検討します。その背景、その意味、私たちに投げかける課題、福音の真髄を浮き彫りにしていこうという試みです。
【目次】
序章
A 聖書を読む
(1)どのように読むのか?
聖書は道徳のルールブックではない/様々な奇跡を残して
到達する神の言葉/釈義と解釈を分ける意義/聖書は今も
語りかける/福音の光の中で
(2)差別の歴史を悔い改める
B 肯定するのか/しないのか
(1)肯定派/非肯定派の分岐点
(2)健全にして対極的な対話
C ホモフォビアという黒幕
1 章 LGBTQ―― 歴史的展開
A 「性的指向」・「性自認」――概念の誕生
(1)負の遺産 (2)日本では
B トランスジェンダーと性自認
C クィア、クィア・スタディーズ
(1)性の多様性という意味でのクィア
(2)性の多様性と「クィア・スタディーズ」
D アメリカにおけるゲイ・レズビアン運動の歴史
(1)抵抗運動のはじまり/(2)カミングアウト
(3)テレビがLGBTをお茶の間に(4)エイズ・パニック
(5)同性婚を求めて/(6)同性婚成立の精神
2 章 ソドム 創世記19 章1~11 節
A 「知る」――性的な意味?
B 古代オリエントの文脈
C もてなしの美徳と暴行の悪徳――物語の流れ
D その後の解釈
E 士師記19~21 章――女性の犠牲的扱い
3 章 レビ記18 章22 節、20 章13 節
A 同性間の性的行動の禁止は何を意味するのか
(1)異教神殿での男娼との交わりの禁止
(2)異性愛の前提 (3)異性愛男性の強い性欲
B 「忌むべきこと」――聖なる民のアイデンティティ
(1)独自性/(2)「忌むべきこと」』/(3)力点は排他
性へ(4)異性愛主義(5)律法主義と比較して
C キリストの福音
(1)周縁の者を招くイエス (2)新しい戒め
D ブルッゲマン――聖書の神は受け入れる
4 章 Ⅰコリント6 章9~11 節
A 古代ギリシャ・ローマの性
(1)師弟関係における少年愛/(2)狼が羊を/
(3)「男らしさ」の支配構造
B マラコスとアルセノコイテース
(1)マラコスの意味(2)アルセノコイテースの意味
(3)訳語のシフト (4)スクロッグスの提案
(5)小さなシフト/多大な影響(6)釈義の視点
(7)ポルノスは「淫らな行いをする者」?
C Ⅰテモテ1 章10 節
5章 ローマ1 章24~27 節 釈義1
A コンテクスト(文脈)
B 「取り替える」――論理の骨組み(1)
C 「自然に順じる」/「自然に反する」
D 「自然」の釈義を整理する――どの要素を?
E 焦点は情欲に――倫理の骨組み(2)
(1)神は情欲へ引き渡した――もう一つの論理
(2)堕落を極めた皇帝
6章 ローマ1章24~27 節 釈義2
A 女神崇拝におけるセクシュアリティ
(1)金の子牛とイシス崇拝 (2)神殿男娼
(3)釈義のもう一つの可能性
B なぜいきなり? 黙示文学のレトリック
(1)ノアの洪水とソドムの火
(2)ユダ書のレトリック
(3)Ⅱペテロ――黙示文学のレトリック
(4) 偽典『ナフタリの遺訓』のレトリック
7章 ローマ1章24~27 節 釈義と解釈
A 三種類の応答
(1)「悔い改めて自分を変える」
(2)「受け入れても、肯定はしない」
(3)「受け入れ、肯定する」
B 性的指向――ガリレオの望遠鏡
C 新しいレンズに否定的な人々
D 釈義と解釈
E 解釈は大きな原則(福音)に依拠する
(1)女性の役割 (2)軌跡の解釈学
8章 独身――同性婚
A 聖書における独身の教え
(1)イエスの独身の教え――天の国のために
(2)パウロのⅠコリント7 章――召しと賜物
(3) キリスト教は同性愛者に独身を迫るのか?
B 「一体となる」
(1)創世記2:18~25/(2)預言者たち
(3)イエスの教え/(4)エフェソ5:21~33
C 同性婚をどのように考えるのか?
(1)ヘルムート・ティーリケ、ロバート・ソング
(2)ローワン・ウィリアムズ
(3)ジェフリー・サイカー
(4)ウェスレー・ヒル
9章 LGBTQ の尊厳
A 性的指向と性的行動は分けられるのか?
B 人の尊厳を傷つける「恥」
(1)恥と告白/(2) 恥は存在に関わる
(3)恥と罪責/(4) 共感力と差別
C イエスによる尊厳の回復
(1)十字架/(2) 息子・娘として迎える
(3)エチオピア人の宦官の洗礼
D 新創造――「自然に反する」神の働き
終び
A 議論の違和感――入国審査
B 福音派のど真ん中
C 終わりに