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〈本書は、先住民族の権利の土台ともなる、誤謬に満ち、歪曲され、捏造された「近代史」という歴史の「癒し」を行なってきた著者の格闘の記録である。本書の原題が、“Healing Our History”であるため「癒し」という穏やかな日本語が用いられているが、著者が取り組んできたことは、百年を悠に超える「近代」という傷ついた時間の流れを修復する壮大な作業といえる〉――本書解説「歴史を正すことに格闘する――その重要性と難しさ」(上村英明・恵泉女学園大学名誉教授)より
ニュージーランドへのアイルランドからの入植者というルーツをもつ著者は、若いころにアメリカの公民権運動や開発途上国への国際救援活動などに関わるなかで、先住民族マオリが植民地時代に受けた痛みの影響が、失業や差別などさまざまな形で現代にまで続いていることを知ります。また、そのころ盛んになっていた植民地時代に収奪された土地へのマオリによる補償要求運動を目の当たりにしながら、多数派の人びとにはマオリと連帯してそれらの不正を正す責任があることに気づきます。
前半の第1部では、ニュージーランドの植民地時代の起点である、1840年に英国がマオリに結ばせた「ワイタンギ条約」以後、どのように植民地化は進んでいったのか、誰がどのようにして先住民族の土地収奪を可能にしたのか等、ニュージーランドの植民地化の歴史を先住民族マオリの視点から捉え直し整理していきます。
後半の第2部では、マオリの権利と尊厳の回復とともに、不正を正し社会に正義を回復させるために自国の植民地時代の歴史をどう学ぶべきか、マオリとパケハ(白人植民者)とに二極化された社会をいかに「和解」に導くのか、著者が開発・提唱する「ワイタンギ条約ワークショップ」(パラレルワークショップ)を中心に論じます。
21世紀の私たちが植民地主義をいかに克服していくのかという困難な課題に対する一つのユニークなアプローチを提起する書。
ニュージーランドのベストセラー、初邦訳!
【目次】
謝辞
序文――第3版出版に寄せて
まえがき
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イントロダクション――長い旅のはじまり
第1部:歴史
第1章 信仰、ジャガイモ、人を温かく迎え入れる心
第2章 歴史の断片――アイルランド、カナダ、オーストラリア
第3章 宣教師による征服――キリスト教と植民地化
第4章 神話を打ち砕く
第5章 神話との闘い
第6章 なぜ私たちは歴史を知らないのか?
第2部:癒し
第7章 関わるということ
第8章 自分自身の物語を大切にするということ
第9章 アイデンティティを尊重する――パラレルアプローチ
第10章 白人特権――隠れた恩恵
第11章 歴史への癒し
第12章 希望のパラドックス
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◉付録
◉用語集
◉参考文献
訳者あとがき
解説 「歴史を正すことに格闘する――その重要性と難しさ」……上村英明