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すでにリュミエール兄弟の『受難(ラ・パシオン)』(1897)に現われるイエス・キリストは、サイレントの時代から現代にいたるまで、さまざまにその姿を変えて、映画史のなかに生きつづけている。
イエスの伝記映画(ビオピック)はもとより、聖書を原型とする物語やキャラクター、「受難」「原罪」などのテーマ、「贖い」「裏切り」などのライトモチーフ、宗教画のイコンや構図に由来する表現手法――中世以降の絵画に精通した西洋美術史家の眼を通して作品を見ることで、映画がキリスト教とともにありつづけてきたことを、私たちは改めて知るだろう。
さらに、デミル、パゾリーニ、ブレッソン、タルコフスキー、キェシロフスキ、スコセッシ、ゴダール、フォン・トリアー、モレッティはじめ、ここに論じられる作品を生んだ名匠たちが、その創造において、先行する芸術の尽きせぬ泉からいかに学び、技を汲みとって独自の人間像を映し出してきたかも、本書は縦横に語っている。
はじめに
1 映画と宗教、あるいは映画という宗教
2 サイレントのイエス
3 イメージの力、言葉の力、音楽の力──パゾリーニ『奇跡の丘』
4 変容するイエス像
5 その子はいかにして生まれたのか
6 脇役たちの活躍──イスカリオテのユダとマグダラのマリア
7 キリストに倣って
8 「聖なる愚者」たち
9 「クリスタ」たち
10 瀆聖
おわりに