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写本の製作と受容から見る中世世界
巻物から冊子体のいわゆる写本へ主流が移ったヨーロッパ中世の始まり、それはデジタル時代・活字印刷の誕生と並ぶメディアの革新、つまり口述から書記への転換の始まりでもあった。本書は、物としての写本の材料と作られ方、製作にかかわった注文主・詩人や知識人・修道士や職業書記らの実態から、手にした人が本をどう読んだか、本と書かれたテキストの双方がもった政治的役割まで、当時の社会における本と、本をめぐる文化・社会的状況を、さまざまな角度から解説する。
なかでも、一種の文芸マネージメントから生まれた傑作・マネッセ写本についての、成立背景を含めた製作過程や、その後の数奇な運命とドイツ史とのかかわりの情報は、これまで詳しく紹介されたことがなく、またミステリのようにおもしろい。
「人の心臓より尊い」と言われた羊皮紙の世界、書記が一日に書ける分量と与えられた物質的・精神的報酬、仕事に対する書記のプライドや不満が書き込まれた挿絵や奥付、写本の窃盗事件あれこれ……。
物としての写本とメディアとしての写本をめぐる一冊。