出版社・メーカーインタビュー(丸福巧芸)

福田社長

【丸福巧芸】

 出版社・メーカーインタビューの第二回目は、キリスト教家庭祭壇を製造・発売している丸福巧芸の福田憲二社長様をお訪ねしました。


―福田社長さんの経歴を簡単に教えていただけますか。

福田社長

 私は戦後間もなくに、大阪の家具屋さんで働いていました。四国の徳島出身でして18歳の頃に嫁入り道具の鏡台を扱う仕事から始めたのが始まりです。いわゆる家具問屋ですね。ですから家具の製造、販売をしている職人さんとの付き合いも60年以上。私は現在82才です。家具問屋としてずっと家具職人の技を見てきました。


―最初は家具問屋をなさってたんですね。それがどうして家庭祭壇を売ることになったのですか?

福田社長

 一足飛びに家庭祭壇に行き着いたのではありません。まずある月販会社の社長さんが、明るい家具調仏壇を考案したんです。時代は昔の仏間のある日本家屋から、マンションなどの新興住宅に住環境が移っていく最中でした。今の時代が求めているのは家具調仏壇だというんです。
 そこで、材料から職人から全てのコーディネートが出来る人物を探していて私に白羽の矢があたったというわけです。「京都家具調仏壇株式会社」という名前で立ち上げた会社の常務として迎えられました。現在では家具調仏壇というのは普通に売られていますが、当時その最先端を行ったわけです。

 

―うーんお仏壇。キリスト教と関係ありませんね(笑)。

福田社長

 案外そんなこともないですよ。昔からキリスト教徒の方でも仏壇を買って、中を全部外して十字架を置いて、家庭祭壇に仕立る人はいました。私はそういうお客さんをたくさん知っていました。要はお祈りの場所をご家庭に持ちたいということだと思います。キリスト教の教えはよく知りませんでしたが、お祈りの場所がほしいというのは自然な感情だと思っていました。


―それではそういう方のご要望に応えてキリスト教の祭壇を造ったんですね。

福田社長

 いやいや、話はそんなに単純じゃありません。そのころ、京都でジェームス・ハヤット神父様というカトリックの高名な神父様がおられました(注1)。テレビやラジオに出ておられて、新聞などに記事も書いておられた方です。その方の影響で当時の社長もカトリックの信者になって、熱心に教会に足を運んでいましたね。
 ある時、社長がハヤット神父様とお話していてキリスト教の家庭祭壇に話が及びました。ハヤット神父様は「それはいいことだ。自宅に祈りの場所をもつのは自分の国の風習じゃないですか。日本人のためにおやりなさい。誰が祭壇はダメだと言ったんですか。私は応援いたしますよ。」とおっしゃってくださったんですよ。
 たとえば長崎のキリシタンの方々だったら歴史的な経緯から祭壇を持っていたでしょうけど、当時一般的にみてキリスト教の祭壇を造る業者は全くいませんでしたね。ハヤット神父様は「国民の良い風習なのだから、こういうのは残しなさい」とおっしゃってくださいました。


―そんなことがあったんですか。でも、家庭祭壇を作る業者は皆無だったんですよね。

福田社長

 私のつてで福岡県の大川市にある家具製作の会社を知っていました。大川市は家具の世界ではとても有名な町で、大川の家具といったらそれだけでブランドになりましたなぁ。
 その中でも技術に優れている会社があるんです。そこは材木を丁寧に成形してきれいなアーチ型にすることができるんです。当時としても今でもかなりの高い技術ですよ。家庭祭壇製作の話は何社も何社も断られましたが、そこはついに引き受けてくれたんです。

 試行錯誤の上、アーチ屋根の木型をつくってそれを整えていきました。キリスト教の祭壇にピッタリのデザインだと思いましたね。経費も手間も大変なものでしたが、職人さんとは二人三脚でやって来ました。その後紆余曲折ありましたが、現在は私がキリスト教祭壇販売事業を引き継いで責任をもって販売しています。


―家庭祭壇を製作・販売していて特に気をつけていることはありますか?

福田社長

 あまり高価なものはあえて造らないということですね。以前、仏壇を扱っていた時は数千万円のものを平気で売っていましたよ(笑)。紫壇黒檀などの高価な素材を使うと値段は跳ね上がるんですが、果たしてキリスト教の信者の方々が求めているものはそれかというと、そうとも思えない。
 そこでしっかりしたものは造りますが、一財産になるようなものにはしていません。「サペリ」という木材を使っているのも良心的な値段でできる高級素材だからです。(見本を見せて下さる)サペリは皺になったりしない家具の高級素材です。いろいろな素材の中からこれを選んでいます。グランドピアノにも使われている素材ですよ。また同じサペリでも下地のしっかりした板に合わせるのとベニヤ板の上に合わせるのとでは耐久性が全く違ってきます。下地がしっかりしていないといけないんです。


―家庭祭壇に興味を持っている方に何かお伝えすることはありますか?

福田社長

 家庭祭壇はあくまで祈りの空間を演出するものだということですね。一部のインターネットで解説されているような厳格な形式の決まりがあるわけではありません。
 問い合わせが来ることもあります。「本当はいけないんじゃないですか」とね。一応ハヤット神父様に勧められたことや、私の思うところはお伝えしますが、迷っている方には無理してお勧めしません。牧師様や神父様とご相談して下さいと言います。でも傾向として、以前はカトリックのお客様が多かったと思いますが、現在はプロテスタントのお客様の方がもしかしたら多いかもしれません。朝夕のお祈りが身近になりましたという声もお聞きします。要は心の平安を得ることが大切ということでしょうかね。故人を記念するためにお位牌だけをご注文される方もとても多いですからね。


―お時間をいただきありがとうございました。


注1)ジェームス・ハヤット神父(James Hyatt、 1922年 - 2009年)
1922年、米国アイダホ州出身。1949年に来日。1952年に「心のともしび運動」を創始、1957年より始まった福音放送番組「心のともしび」は半世紀以上にわたって、テレビ、ラジオ、インターネットで放送されている。2009年に86歳で帰天。

丸福巧芸の家庭祭壇